鑑定会社を並べると、数字の裏にある違いが見えてくる
グレーディングの鑑定サービスは、世界に複数あります。どれも真贋を判定し、状態を数値にして、ケースに封入するという点は共通しています。しかし、各社の公式サイトを一つずつ見比べると、評価の出し方、運営の背景、日本からの申込みやすさに、はっきりした違いがあることがわかります。この記事では、PSA、Beckett、CGC Cards、SGC、TAG、ARSの6サービスを横並びにして見える三つの違いを整理します。
順位付けや優劣の判断は行いません。また、記載する内容は、各社の公式サイトや公開資料で確認できた範囲に限ります。確認できなかった項目は「公式サイト参照」としています。詳しい事実項目は、グレーディング鑑定サービスの比較表で確認できます。この記事は、その表を読むときの切り口を示すコラムです。
違い1:評価の出し方が同じではない
一つ目は、評価の出し方です。PSAは1から10までの整数のグレードで示し、最高位は「Gem Mint 10」です。Beckettは、センタリング、コーナー、エッジ、表面のサブグレードをラベルに表示し、最高位を「Pristine 10」(ブラックラベル)としています。ARSは、Grade 1から10の評価で、完璧な状態のみ「10+」と表記し、真贋のみの場合は「AU」としています。TAGは公式サイトにGrading ScaleとGrading Rubricのページを設け、基準を公開しています。CGC Cardsも、公式サイトにグレード評価に関するページがあります。
数字の表面は似ていても、中身は異なります。ARSは、鑑定は保存状態のみを評価の対象とし、センタリング等の印刷ずれは減点の対象外と説明しています。これに対し、PSAとBeckettは、センタリングの目安を公開しています。PSAの最高評価の目安は、表面がおおむね55対45、裏面が75対25で、Beckettの最高位は表面が50対50、裏面が55対45以上です。
このため、異なる会社のグレードを、数字だけで比べるのは適切ではありません。比較表の「評価スケール」の列は、数字の大小ではなく、評価の考え方の違いを読み取るための材料です。
違い2:運営の背景とグループのつながり
二つ目は、運営の背景です。Collectors Holdings, Inc.の公式サイトには、PSA、PSA Vault、PCGS、Beckett、SGC、Card Ladderなどがブランドとして並んでいます。つまり、PSA、Beckett、SGCは、同じグループのもとにあるブランドです。同社の発表によれば、Beckettは買収後も独立したブランドとして運営され、運営体制や基準も別になると説明されています。
CGC Cardsは、コインのNGC、紙幣のPMG、コミックなどのCGCと同じ所有・経営陣のもとで運営されていると、公式サイトに書かれています。TAGは、Technical Authentication & Grading, LLCが運営しています。ARSは、株式会社Arsalesが運営する日本の鑑定会社で、2020年10月の設立です。
運営の背景を知っておくと、サービスの特徴を理解しやすくなります。たとえば、画像データにもとづく評価を前面に出すTAGと、国内のカードの取扱いタイトルを幅広く公開するARSでは、事業の力点が異なるように見えます。ただし、運営の背景は、評価の優劣を示すものではありません。同じグループのブランドであっても、基準は別々に定められている場合があります。
違い3:日本からの申込みやすさ
三つ目は、日本から申し込むときの経路です。ARSは日本の会社であり、国内サービスとして日本語のフォームから申込みを受け付けています。申込番号の発行から1か月以内にカードが到着するように発送し、作業の完了後に支払い案内のメールが届き、入金を確認してから返送される流れが、公式サイトに示されています。国内で完結するため、国際輸送のリスクや手続きを避けられます。
PSAは、日本語の公式サイトを用意しています。TAGの公式サイトは、日本円での価格表示に対応しています。BeckettやSGC、CGC Cardsの日本向けの受付窓口については、比較表では「公式サイト参照」としており、申込みを検討する場合は、公式サイトで最新の案内を確認する必要があります。
海外の会社へ送る場合は、国際輸送の補償、通関、為替の影響などを考慮する必要があります。申込みの代行サービスを使う方法もありますが、手数料や補償の範囲は事業者によって異なります。どの経路が適しているかは、カードの種類、売却の予定、予算によって変わります。
ラベルと証明番号:売買の場での使われ方
鑑定会社の違いは、ケースに入ったカードが売買されるときにも表れます。晴れる屋2のオンラインショップには、商品カテゴリとして「鑑定品」があり、magiの公式サイトには、ポケモンカードの鑑定品の取引を集計した一覧が表示されています。カードラッシュは、鑑定商品の返品について、通常の商品とは別の注意書きを設けています。売買の場が鑑定品を特別な扱いにしていることがわかります。
買い手の立場では、商品ページに、鑑定会社の名前、グレード、証明番号が載っているかを確認します。そのうえで、鑑定会社の公式サイトで証明番号を照会し、カードの名称やグレードが一致するかを確かめます。CGC Cardsはラベルに証明番号とQRコードを付けて公式の照会ページを用意し、TAGは証明番号の検索とPop Report、ARSは鑑定済みの検索ページを用意しています。照会の仕組みがあること自体が、鑑定会社を比べるときの一つの観点になります。
なお、鑑定品の売買では、同じタイトルのカードでも、鑑定会社が異なれば、出品の価格や買い手の評価が異なることがあります。国内の比較記事でも、同じカードでも鑑定会社によって売値に差が出ると指摘されています。この差が何に由来するのかは、評価の基準、知名度、流通量など複数の要因が考えられ、本サイトで特定することはできません。大切なのは、売る場合も買う場合も、鑑定会社の名前を見て安心するのではなく、基準と証明番号を自分で確かめる姿勢です。
もう一つ、鑑定の目的による違いも挙げておきます。ARSは企業理念のページで、トレーディングカードを「飾る」「鑑賞する」対象として捉え、鑑賞、保護、保全を支えることを使命に掲げています。一方、売買の場で流通する鑑定品は、売却時に状態を示す役割を持つことが多くなります。鑑定を受ける目的が、展示や保管なのか、売却なのかによって、重視する基準や選ぶ会社の考え方も変わります。
表を読むときの三つのコツ
最後に、比較表を読むときのコツを三つ挙げます。第一に、数字ではなく、基準の考え方を読むことです。第二に、運営の背景は事実として押さえつつ、優劣とは切り離して考えることです。第三に、申込みの経路は、費用と手間、リスクを合わせて考えることです。
鑑定の仕組みや四つの評価項目については、グレーディング鑑定の仕組みと評価項目で、鑑定済みのカードを売買する場については、トレカ売買プラットフォーム・カードショップの比較表で整理しています。各社の提供内容や基準は変更されることがあるため、申込みの前には、公式サイトの最新の案内をご確認ください。
