画像認識が、カードの査定と仕分けの現場を変えている
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本ページは、企業の導入事例、プレスリリース、公式サイトに掲載された情報から、確認できた範囲だけを整理しています。精度や処理能力などの数値は、いずれも各社が自社の資料で示したものであり、第三者による検証結果ではありません。製品名の掲載は、特定の製品の推奨を意味しません。
トレーディングカードは、種類が膨大で、同じカードでもレアリティや版、状態によって取引の価格が変わります。ゲームの新弾が出るたびに数百種類のカードが加わるため、買取や仕分けの現場では、カードを正しく見分ける知識と、大量のカードを素早くさばく作業力の両方が求められてきました。この負担を軽くする技術として、画像認識やAIの活用が少しずつ広がっています。
活用の場面は、大きく四つに分けて整理できます。一つ目は、買取店でのカードの識別と査定の補助です。二つ目は、真贋判定や状態評価を画像データから行う鑑定の分野です。三つ目は、大量のカードを種類や価格帯ごとに並べ替える仕分け機です。四つ目は、在庫や価格を管理するシステムです。以下、公表されている事例を順に見ていきます。
買取店のAI査定機:スキャナで読み取り、AIが型番とレアリティを判別
国内の事例として、株式会社テイツーが自社開発した自動査定機「TAYS(テイズ)」が、PFUのスキャナ導入事例として公開されています。事例ページは2023年3月6日の掲載で、テイツーは岡山県岡山市に本社を置く総合リユース企業として、「古本市場」「ふるいち」「トレカパーク」などを展開し、直営店とフランチャイズ店を合わせて136店舗(2022年12月31日時点)と紹介されています。
導入の背景として、事例ページは、中古のトレカは、レアリティを肉眼で見分けられる熟達者でなければ正確に査定しにくく、査定が特定の人に依存して、待ち時間や売上の機会損失が生じていたことを挙げています。TAYSは、業務用スキャナ「fi-8170」でカードを読み取り、AIがイメージデータから型番、絵柄、レアリティを判別して、データベースと照合したうえで査定結果を一覧に表示します。表面の傷は、スタッフが「キズA/B/C」から選ぶことで、傷の程度に応じた割引価格に修正されます。買取が成立した分のデータはPOSシステムと連携して確定し、販売価格のラベルが出力される流れです。
判別の精度について、事例ページは96〜97%と記載し、既存のカードについてはほぼ100%という店舗側の評価も紹介しています。ここで見落とせないのは、傷の程度の判断は、スタッフが選択する形になっているという点です。AIが担っているのは主にカードの識別とデータベースとの照合であり、状態の評価を含む最終的な査定は、人と機械の分担になっていることがわかります。
運用の経緯は、2019年11月に直営店で運用を開始し、2021年10月から外販を始めたとされています。事例ページは、直営店とフランチャイズ店を合わせた136店舗で運用されるほか、同業他社への販売も進み、2022年12月時点で顧客数が3桁に達したと紹介しています。熟練者に頼らず誰でも同じ手順で査定できるようになり、店長が査定のたびに呼び出されることが減ったという効果も報告されています。
画像データにもとづく真贋判定とグレーディング
AIの活用は、買取の査定だけでなく、真贋判定や状態評価にも広がっています。コレクテストは、トレカの鑑定サービス「VALUE SCOUTER(バリュースカウター)」を提供しており、AIによる真贋の判定と、インターネット上の取引価格をもとにしたリアルタイムの市場価格情報の提示を組み合わせていると、2024年2月の発表記事で説明しています。同社はAI判定によるトレカの鑑定サービスとして日本初と称し、取引価格を解析して可視化し、AIでトレカの真贋を判定する技術について特許(特許第7251712号)を取得していると述べています。専門の鑑定スタッフとAIを組み合わせて、真贋鑑定とグレーディングを行っているとも説明しています。
同じ発表では、トレカの価格高騰を背景に精巧な偽造品が増え、特に個人間取引の市場で多く出回っていること、偽造品の被害に遭った人からの鑑定依頼が同社に多く寄せられていることが語られています。特許庁の海外展開支援室長との意見交換では、トレカの現状、偽造品による被害、AIなど先端技術の活用の三点が話題になり、国内外での取り締まりや啓発、本物を検査できる仕組みの整備が必要だという言及があったとされています。
海外のグレーディング会社でも、画像データを使った評価が取り入れられています。TAGの公式サイトには、「DIG REPORTS」と題したページがあり、画像データにもとづくDigital Imaging and Gradingのレポートを提供していることがメニューに示されています。同社の公式ヘルプでは、すべてのサービスで、カードの高解像度の画像と、QRコードで確認できるDIGレポートが付くと案内されています。人の目による評価(手作業による鑑定)との違いを説明するページも公式サイトに用意されています。
もっとも、画像解析によるグレーディングが、従来の目視による鑑定に置き換わったわけではありません。評価の基準は各社が独自に定めており、画像解析の結果が市場でどのように受け止められるかは、取引の現場や買い手の判断に左右されます。AIを使っているかどうかは、鑑定サービスの比較表の「AI・画像解析の公表」の列で確認できますが、公表の有無と評価の質は別の問題です。
自動仕分け機:大量のカードを種類や価格帯で並べ替える
店舗や買取センターでは、買い取った大量のカードを、タイトル、収録セット、レアリティ、価格帯ごとに仕分ける作業が日常的に発生します。この作業を機械化する取り組みとして、海外では専用の仕分け機が販売されています。
TCG Machinesは、公式サイトでTCG(トレーディングカードゲーム)向けの仕分け機を紹介している企業です。サイトによれば、仕分けの条件として、ホイルの有無、日付、色、セット名、価格、レアリティなどが選べます。処理能力は最大で毎時3,600枚、精度は99.9%と同社のサイトに記載されており、入力容量は1,750枚です。世界の数百のゲームストアに導入されていると同社は説明しています。2026年10月22日から25日にドイツのエッセンで開催される催しへの出展も告知されています。これらの数値は同社の自己申告であり、当サイトが検証したものではありません。
過去には、2019年に、マジック:ザ・ギャザリングのカードを価格順やセット順に自動で並べ替える「Roca Sorter」というロボットが報道で紹介された例もあります。このように、カードを一枚ずつ画像で識別して並べ替える技術は、数年前から実用化されてきました。
国内の店舗向けの専用機については、本レポートの作成時点で、公式の製品ページで仕様を確認できたものがなかったため、掲載していません。導入を検討する場合は、機器の対応タイトル、読み取りの精度、カードを傷つけない構造か、新弾への対応にかかる期間とデータ更新の方法を、メーカーに直接確認する必要があります。
在庫管理システムと価格データ
カードショップの在庫は、シングルカードが数万から数十万種類にのぼることもあり、手作業での管理は現実的ではありません。遊々亭の公式サイトは、取り扱いカードが約35万種類以上、在庫が1000万枚以上と説明しており、規模の大きな店舗では、種類ごとの在庫数と価格をシステムで一元管理することが前提になっています。
システムを外部に提供している企業もあります。株式会社駿河屋の企業サイトの「事業紹介」には、クラウドPOSシステムとマーケットプレイスが並んでいます。ただし、トレーディングカード専用の機能の詳細は、本レポートの作成時点で確認できていません。導入を検討する場合は、カードの型番管理、相場の自動反映、複数チャネル(実店舗、自社サイト、外部モール)の在庫連携、古物営業法に基づく帳簿の記録への対応を、提供企業に確認することが大切です。
また、売買プラットフォーム各社は、取引に付随するサービスも提供しています。magiの公式サイトのメニューには「magi VAULT」の項目があり、サービスの内容や料金は公式サイトの案内を参照してください。
技術の限界と、利用するときの注意
画像認識やAIは、定型の作業を速く、一定の水準で行ううえで有効ですが、限界もあります。第一に、新弾や新しい版への対応です。AIが識別できるのは、データベースに登録されたカードに限られるため、新しいカードが出たときに、データの追加が間に合わないと識別できない可能性があります。第二に、状態の評価の難しさです。傷の程度や光の反射の見え方は、撮影条件に左右されるため、画像だけで人の目の判断と同じ水準に到達できるかどうかは、サービスによって異なります。第三に、偽造品への対応です。偽造の手口は変化し続けるため、AIの学習データの更新が重要になります。
利用者としては、「AIが判定したから正しい」と受け取るのではなく、判定の根拠となる画像や、最終的な判断を誰が行ったのかを確認することが大切です。また、AIによる査定額は、カードの相場や店舗の在庫状況によって変わる参考値であり、将来の価格を示すものではありません。査定額に納得できない場合は、他の店舗や方法でも確かめる選択肢があります。
導入を検討する事業者が確認したい項目も整理しておきます。まず、対応しているタイトルと、新弾が出たときのデータ更新の頻度や費用です。次に、カードの識別だけでなく、傷の判定や相場の反映まで機器が担うのか、それとも人が判断するのかという分担です。さらに、POSや在庫管理システムとの連携の可否、買取時の本人確認や帳簿の記録との関係、故障時の対応や保守の体制も確認事項になります。導入事例の数値は、条件の異なる他店舗でそのまま再現できるとは限らないため、試用や見学を通じて、自店の運用に合うかどうかを確かめることが望まれます。
また、AIの出力は、使う人の習熟によっても結果が変わります。撮影の角度や明るさ、カードを置く位置、傷の判定を選ぶ基準がばらつくと、同じカードでも査定額が変わります。テイツーの事例が、傷の程度を「キズA/B/C」の三段階から選ぶ形にしているのは、人の判断の基準をそろえるための工夫と読み取れます。機器を導入するときは、操作の手順書と判定基準を店舗内で共有する運用が欠かせません。
導入する側にとっても、機器は人手の代わりではなく、作業を標準化するための道具です。AIの結果を確認する人、データを更新する人、機器の不具合に対応する人の役割を決めておくことが、安定した運用につながります。カードの取引に関わる法令上の義務、たとえば買取時の本人確認や帳簿への記載は、機械の導入にかかわらず事業者が負うものです。詳しくはカードショップ開業と仕入れの基本で整理しています。
一次情報の確認先
- 株式会社PFU(リコー)導入事例:株式会社テイツー様(トレカ自動査定機TAYS)
- ゲームビジネス(コレクテストの発表):トレーディングカード業界における偽造品の増加について、特許庁との意見交換
- TAG:公式サイト(DIG Reports、Pop Report)
- TCG Machines:公式サイト
- 株式会社駿河屋:企業サイト(事業紹介)
- 株式会社スカラプレイス:遊々亭のご紹介
- 株式会社ジラフ:magi 公式サイト
