ニュースの概要
PSAの鑑定待ち在庫が、2026年10月6日時点で約820万枚まで減ったと報じられた。7月末には1240万枚、9月下旬には約900万枚だったため、約2か月半で3割強減った計算になる。PSAは6月に低価格帯のValue系サービスの新規受付を止めており、最も安い料金帯は今も事実上閉まったままだ。鑑定能力の拡大と受付の絞り込みが同時に効いた形である。通常のサービスを再開するには、待ち在庫をおおむね500万枚まで落とす必要があるとみられている。
引用元: PSAの鑑定待ち在庫が820万枚まで減少、鑑定サービス正常化に進展(El Mundo)
分析・見解
2か月半で3割減、数字が示す処理のペース
7月末の1240万枚から820万枚へ。減ったのは420万枚で、割合にすると約34%だ。7月末から10月6日までをおよそ10週間とみると、週に40万枚強のペースで減った計算になる。
ただし、この数字は処理が速くなっただけの成果ではない。入ってくる量を絞り、出ていく量を増やした結果である。水の溜まった浴槽で、蛇口を締めて排水口も広げたようなものだ。9月下旬の約900万枚から10月6日の820万枚までも短期間で減っており、勢いは落ちていないように見える。逆に言えば、受付を再び広げれば在庫はすぐ戻りうる。この数字は、現在の制限があって初めて成り立つものだ。
安い料金帯を閉じたことが在庫減に効いた理由
低価格帯のValue系は、手数料が安い分、一度に大量のカードが持ち込まれやすい。ここを6月に止めたことで、新しい在庫の流入が大きく減ったと考えられる。なお、流入量の内訳は公表されていないため、効果の大きさは推測の域を出ない。
もう一つ見逃せないのは、この措置が値上げと同じ働きをする点だ。最安枠が閉じている間、利用者は上位の料金帯を選ぶしかない。PSAは処理を減らさず、手間に見合う単価の仕事を優先して回せる。需要を価格で整理する手法は、人気公演のチケットが席種ごとに販売時期をずらすのとよく似ている。また、料金の上昇に不満を持つ利用者が他の鑑定会社へ流れた可能性もある。これも在庫減の一因かもしれないが、裏付けとなるデータは今のところ見当たらない。
目標の500万枚まで、あと320万枚という距離
通常サービスの再開には、待ち在庫を約500万枚まで減らす必要があるとされる。820万枚からだと、あと320万枚だ。直近と同じ週40万枚強のペースなら、単純計算で8週間前後となる。
ただし、同じペースが続くとは限らない。在庫が減るほど、残りは複雑な案件や高額帯の依頼が占める割合が増える。また年末は取引が活発になり、持ち込みが増えやすい。もう一つの鍵は人手と設備だ。鑑定は目視による検査が中心で、人員を増やしても教育に時間がかかる。能力拡大の効果が今後も同じ強さで続くかは、慎重に見たい。年内に完全な正常化と見るのは楽観的で、段階的な再開をまず想定するのが現実的だろう。これは筆者の見立てである。
待ち在庫は市場に出てこない「未確定の供給」だ
820万枚という数字は、鑑定済みとして市場に出てくる予定のカードの山でもある。グレードが付くまで、そのカードは売り手も買い手も価格を決めにくい。つまり待ち在庫とは、将来の供給量を先に見せている数字と読める。
在庫が縮むと、鑑定済みカードの出回る量は少しずつ戻る。品薄が続いた高グレード品の価格は落ち着く可能性がある。価格の見方としては、在庫の増減そのものより、減る速さの変化に注目するとよい。一方、鑑定の安さを前提に仕入れてきた層は、コスト構造の見直しを迫られる。回復は、誰にとっても同じ恩恵になるわけではない。
ビジネスへの影響
低価格帯に頼ってきた店は、仕入れの採算を見直す
最安料金帯が閉じたままだと、1枚あたりの鑑定費用は上がる。数千円規模の安価なカードは、鑑定費用が価値を上回りやすい。そこで、鑑定に出す基準を決め直したい。たとえば、鑑定後の想定価格が鑑定費用と送料、待ち期間の資金コストを足した額の2倍以上になるカードだけを出す、といった線引きが考えられる。倍率は一例であり、自社の利益率に合わせて設定してほしい。
仕入れ側も同じだ。未鑑定品を安く買って自社で鑑定に出す手法は、待ち期間と費用の両方が読みにくい今は、利幅が薄くなりやすい。また、顧客への説明も重要だ。鑑定費用の上昇を価格へ転嫁するなら、理由を明示した方が理解を得やすい。
在庫と資金の回転を、待ち時間込みで組み直す
待ち在庫が減っても、すぐ短納期になるとは限らない。鑑定に出したカードは、戻るまで売れない資産である。資金繰りに余裕のない店舗は、一度に出す枚数を分け、毎月一定数ずつ送る方法が安全だ。大きな相場変動に当たる確率を分散できる。また、戻ってきた時点で相場が下がっているリスクも見込み、見積りには余裕を持たせたい。
販売面では、鑑定中のカードを予約販売や委託として扱う手もある。ただしグレードが未確定のため、購入者への説明を丁寧にする必要がある。
通常サービス再開の目安を、判断の基準に入れる
500万枚という数字は、判断の目印になる。月次で待ち在庫の公表値を記録し、500万枚に近づいたら最安枠の再開に備えて送付計画を前倒しで準備するとよい。ただし再開時期はPSAの発表次第で、見通しは変わりうる。公式の告知を必ず確認してほしい。複数の鑑定会社の料金と納期を並べ、送り先を使い分ける体制も有効だ。社内では、担当者が変わっても同じ判断ができるよう、送付基準を文書にしておきたい。
